富士山の噴火メカニズムを教えた三宅島 12月30日追記

 日本の古墳や神社が富士山だけでなく、三宅島を指し示すことを不思議に思っていました。富士山の噴火に関連する重要な情報になる事はすぐに想像出来ましたが、この状況を理解するのには少し時間がかかりました。
 三宅島以外にも重要な情報があると思い調べてみました。その結果から多くの追加情報が明確になり、現時点での答えを出すという所まで来る事が出来ました。
 これまでの解析で1707年型の宝永噴火が起きるメカニズムが、ほぼ理解出来ていました。これに対して、同じメカニズムでは864年の貞観型の噴火は説明出来ないのです。マグマ溜まりのガス圧力が適切に制御されてマグマが出てくる部分は、自然現象としては出来すぎであり宝永型の噴火になる方が確率的に非常に優位にあると思っていました。
 この答えを遺跡群に教えられるとは思いもよりませんでしたが、三宅島への注目を促す部分がこの答えを導いた事は現実です。

 遺跡が富士山の噴火へのヒントをくれている事は明確でしたので、まず、他にはどんなヒントがあるのかを少し調べてみました。本来であればヒントをくれている古墳が先史文明の遺跡である事を確認してから先に進めるのですが、今回は時間の都合でこの確認は先送りです。関連情報が広まる時には誰でも出来る検証作業です。興味のある人の仕事になるでしょう。
 もう一つこの作業をする必要を感じた理由があります。これまで2年ほど西之島の噴火が継続し、島が大きく成長してきました。過去にも一度止まりかけたと思いますが、その時はまた噴火を再開しています。
 この西之島の噴火が止まったというニュースが流れてきました。気象庁の観測ですから間違いなく、火口の温度も100度から20度へと下がるほどであり現在に至るのです。

 約2年ほどこの場所でフィリピン海プレートの北上するエネルギーをマグマに変えてきました。この噴火がなければ他の動きが促されて、311以降の日本列島の地殻変動を進めていたでしょう。当時はその先を予想することは出来ませんでした。
 実際に噴火がなかったとしてどうなっていたのかは明確になりませんが、何通りかのパターンを描けるようになったと思います。
 富士山の噴火に至るメカニズムが進行しており、この進行を遅らせることにつながった物が西之島の噴火であり、この停止はメカニズムの進展を促すと思います。

 日本の各地の古墳はその地の最大の物が富士山や三宅島に向けられるだけでなく、伊豆諸島や遠く硫黄島まで意識されていたと思います。古墳の位置からこれらの島の位置が直線上に並んでおり、遺跡は島々の一部を選ぶことで、情報にしていたのです。伊豆大島から新島を経て神津島が指し示されるのですが、神津島と新島を区別する必要がありそうな事と、八丈島と青ヶ島も同様に区別する必要のある事が分かりました。
 富士山と三宅島は同類で、伊豆大島と三宅島も同類という区別も伝えられていました。こういった区分の意味を考えることに重要な意味がありました。

 遺跡を残した時代を6300年前としても、彼らは約5千年分の噴火の統計評価のデーターを持っていたと思います。今の私達には864年の噴火と1707年の噴火しかデーターがないのですが、彼らにはこれを越える蓄積があり、その結果を教えてくれていると思います。1万年前から変化した噴火のパターンを評価して遺跡に組み込んで教えてくれた物でしょう。
 遺跡側はその地方のその場所における重要な統治の拠点になっており、地方最大の古墳はこちらの目的がまず一番でした。開けた場所で多くの人に見えることがまず重要でした。その後に調整の範囲で指し示せる場所を教えるように配置されている様でした。九州、山口、広島、岡山、大阪、奈良、山梨、群馬、茨城、宮城においてその地区一番の遺跡にはこの機能を与えていました。これだけの数の一番が揃うのであり、当時の人々の意図は明らかでしょう。

 また、今回法隆寺の組み込みまで確認出来ました。法隆寺が古墳や当時の神社と同じレベルまで古いという可能性が明らかになりました。始まりの時点には支配層の仏教の知識しかなかったはずであり、それまでの神道を仏教に変える部分は大きな決断だったでしょう。歴史が残っていない事は疑問の大きな部分であり、明らかに消された歴史なのでしょう。先史文明の時代に大型の古墳と関連する神社が作られ、その後に小型の古墳が真似されて残り、現在に至ると思います。古墳時代の方が古いのは認めにくいかも知れませんが、高度な先史文明の技術を残している以上、他の古墳とは区別すべきでしょう。
 調べた中では青森の三内丸山遺跡は暦の機能を持っており、高度な文明の名残を残していました。岩戸山古墳や仁馬山古墳の様な集落である以上、古墳が組み合わされていても良いはずですが、相当する物を見つけることは出来ませんでした。この場所から天神山古墳の数百メートルの場所を経由して富士山の火口です。当時はその場所に集落があったでしょうから、ここにも先史文明の情報があったのではないかと思えました。
 時代の区分は6300年前よりも少し新しくなっています。稲作りと大型古墳の時代が終わり、土偶の時代に入っている様です。当時の日本に統治上の変化があったのかも知れないと思います。先史文明を手放した時期に見えています。

 遺跡の側にも色々な発見があり前置きが長くなりました。富士山の噴火については貞観と宝永の噴火を例として見てゆきたいと思います。

838年     神津島  0.66(数字の単位はkm^3でマグマの噴出量です。)
850年     三宅島  0.086
856年頃    伊豆大島 0.06
864年     富士山噴火
838~886年のどこか 新島 0.085
886~887年 新島   0.73

1684~90年 伊豆大島 0.12
1707年    富士山噴火
1763~69年 三宅島  0.066
1777~92年 伊豆大島 0.2

1950,51年 伊豆大島 0.024
1986年    伊豆大島 0.029
2000年    三宅島  0.01

 八丈島と青ヶ島も参考にしたいところですが、遠い海上にあって明確なことは分かりにくく、江戸時代以降でも大きな噴火はないと言うことでした。島民が全員亡くなるレベルでも噴火の規模としては小さな物でした。
 この2島については、富士山の噴火に際して同時期に噴火が起きやすくなると言うレベルに見ています。
 この順番を見たところで、2000年の三宅島の噴火を見てみたいと思います。イラストのa)~d)は以下の内容です。産総研地質調査総合センター第9 回シンポジウム三宅島の地下では何が起きているか?篠原宏志氏の資料です。

2000 年に始まった三宅島火山の活動推移模式図
a)岩脈状マグマが上昇し,海底噴火に至る。
b)三宅島直下のマグマ溜まりからマグマが流出し,三宅島と神津島の間に巨大岩脈を形成する。マグマ溜まりの減圧により,直上がピストン状に陥没し山頂にカルデラを形成する。
c)陥没に伴い形成される割れ目系を通じてマグマが上昇する。地表近傍で地下水と接触しマグマ水蒸気爆発が発生する。
d)マグマ溜まりと地表近傍をつなぐマグマ火道内で脱ガスによるマグマ対流が生じ,大量火山ガス放出が継続する。

 富士山噴火の二つの例とも、伊豆大島の噴火より始まっています。この部分のマグマ溜まりが潰れると、富士山のマグマ溜まりにも圧力がかかるのでしょう。フィリピン海プレートの西側が北に動きやすくなるので、この部分が直接富士山のマグマ溜まりを押しているでしょう。
 その後に起きる事で状況は変化しています。今回は三宅島の噴火が起きましたが、マグマの流出が少なく、マグマ溜まりを潰すと言うよりはその位置を変えただけに終わりました。これでは富士山のマグマ溜まりに十分な圧力をかけるところまで至らないでしょう。
 この状況で房総沖地震と東海地震が相次いで起きたのが1707年の宝永噴火です。マグマ溜まりは急激な減圧により発泡し、火山灰の噴出型の噴火になったのでした。
 マグマ溜まりの圧力が急激に上昇してマグマが外に出てきた物であり、その過程での減圧で火山灰噴火になっているという可能性もあると思います。どちらの場合も急激な圧力変動と火山ガスの多さが問題であり、これを引き起こすと火山灰型の噴火になりやすいのです。

 貞観噴火の場合は三宅島の噴火の前に神津島でも大量のマグマが放出されて、この場所のマグマ溜まりが潰れています。その影響が伊豆大島にも三宅島にも及んでマグマ溜まりが潰れ、その結果富士山のマグマ溜まりを大きく潰す動きをした物と思います。
 この時のマグマは2年かかってゆっくりと出てきました。この時の条件としては、火道の確保があると思います。富士山は小さな噴火を継続中で、火山ガスの蓄積が少なくマグマは押されて出てきたというイメージです。
 現在の富士山のマグマ溜まり状況は、内部に火山ガスをため込んでいます。圧力が上昇すると大きな力で外に出ようとします。この力で古い火口を吹き飛ばす時には急激にマグマ溜まりの圧力が低下するので、そこから大量の発泡が始まり大噴火に至ってもおかしくなくなります。大きなリスクであり、現状を明確に調べる必要のある物であって、外から見て想像していても仕方がない物です。
 火道が確保されていれば、マグマはゆっくりと出てこれると思います。三宅島の例では大地震とは異なり、プレートの動きは1ヶ月単位のゆっくりした物でした。心配なのは始まりの瞬間であり、ガスさえ抜けていれば問題なくマグマ流出になるでしょう。

 くどい様ですが、プレートの駆動によるゆっくりとしたマグマ溜まりの潰れによる噴火ではなく、房総沖と東海の大地震が富士山のマグマ溜まりを刺激する時、大きな火山灰型の噴火になりやすいことは明らかです。圧力の急激な変動が問題であり、加えて内部に蓄積されている火山ガスも大きな問題です。これらに向き合うことなく1707年と同じ宝永噴火のレベルで済むと考えるのは安易すぎるでしょう。マグマ溜まりが両側から潰される時の影響は宝永噴火よりも何倍か激しくなっても不思議ではありません。
 三宅島の2000年の噴火は、イラストに描いたように、プレートの動きに生じていた歪みを解消した物です。その前に起きた2度の伊豆大島の噴火により伊豆大島の西側が北に動いたはずであり、これに釣られて東側が動くことになった物です。当時フィリピン海プレートの西側が動いたのであり、東側ではこれに合わせた調整をした動きが2000年の噴火になったのです。
 通常の火山噴火の理論には、マグマが上昇して来る事で噴火に至るという物しかないようです。火山の本を読んでも大地震との相関を指摘する程度ですが、実際の噴火ではプレートの運動が大きく影響していると思います。

 遺跡の指し示す三宅島の解析でこのレベルを理解する事になるとは思いませんでした。これまで貞観噴火のメカニズムは明確には理解出来ていませんでしたので、大きな進歩です。2000年の三宅島直下のマグマが神津島と三宅島の間の岩脈に移動した理由は、プレートの動きが注射器の吸い取りの様な減圧する動きになったからであり、これまで考えられてきたマグマの浮力とは全く異なる物でした。
 三宅島の論文にも、マグマが移動した理由を明確に説明している物はまだ見つけられていません。地震予知と同じくプレートの運動で噴火を論じていないので、この様な事が起きているのでしょう。
 マグマ溜まりにかかる地下の圧力を、らせんの力で計測することの重要さが改めて理解出来ました。噴火による地殻の動きを計測する道具になると思われます。マグマ溜まりの状況を客観的に評価する尺度に使えるだけでなく、その変化を知る貴重な情報になるでしょう。

 プレートの動きは非常に大きなエネルギーを持っており、プレート全体が月や太陽の引力で50cmも動く時、大きな力になることは簡単に分かると思います。月と太陽の位置により引力のかかり方が変わることで、大きな力としてプレートのバランスを変えていることが理解出来ると思います。その結果イラストのようにプレートは刻まれているのです。
 これ以外にもこちらの恐れる太平洋プレートの回転運動により、周辺の火山活動が活発化します。地殻変動の発生を抑えないと、日本の火山全体が大きな活動を始めることになるかも知れないのです。この部分は想像しにくいかも知れませんが、日本海の海底の川同様に以前の日本で起きていた事なのです。この関連のイラストは論文添付の資料です。

 房総沖と東海の地震に備えることと、同時に富士山の噴火を検討する事の重要さが理解されることを願っています。
 今回の西之島の噴火の停止により、伊豆諸島にも変化が及ぶかも知れません。八丈島や青ヶ島の噴火にも可能性がありますが、神津島と三宅島の間の岩脈は、プレートが押す場合には潰れやすいものだと思います。この時海底火山からか、神津島か三宅島かは分かりませんが、噴火になる可能性があるでしょう。マグマの流出量次第ですが、その時次は富士山のマグマ溜まりへの圧力上昇になると思います。
 自然が相手ですので、伊豆大島がもう一度噴火することにも可能性としては配慮が必要でしょう。このエリアのプレート運動の調整が進んでいることは間違いありません。2000年の噴火から15年間は次のプレートの動きを促しても良く、十分なプレート運動の調整の待ち時間だったと思います。

この記事は以下の記事の詳細説明です。
日本人の祖先が伝える歴史と富士山の噴火(要約版)
http://www.biblecode.jp/News_View.php?@DB_ID@=336

稲生雅之
イオン・アルゲイン
PS 箱根山と伊豆東部火山群について 12/30
 箱根山の小規模な噴火が2015年に起きており、この関連にも変化が起きるのか調べました。富士山の噴火との関連を科学として検討する必要があっての作業です。
 箱根山は2000年の三宅島の噴火以降時々地殻変動を起こしていました。1953年や1974~78にも活動しています。
 伊豆東部火山群も似ており、1978年から群発地震を起こしながら、1989年に小規模な噴火を起こしています。
 どちらの火山もフィリピン海プレートの北上に関連する影響を受けており、伊豆大島の活動との相関が大きくなっています。この2カ所は伊豆大島、神津島、三宅島とは異なりマグマ溜まりの位置がくの字に折れ曲がる場所ではありません。この意味で八丈島や青ヶ島と似た区分であり、大きく潰れる活動は富士山の噴火に同期しない長周期の活動であると思われます。現状ではプレートが運動していることを教えるサインレベルに見えており、強い相関としては西側が伊豆東部火山群で、東側が箱根山かも知れません。マグマの存在が明らかに大量になるまでは、大きな噴火を起こさないと思えます。
 どちらも小規模な噴火が起きるリスクは今後も残ると思いますが、西之島の噴火の停止による変動がこちらに及んで大規模に噴火するリスクは現時点では小さいと考えます。
 プレート運動による箱根山の変動は、富士山のマグマ溜まりにも影響していると思われます。三宅島の2000年の噴火時にも低周波地震を誘発していました。富士山では火道が塞がっており火山ガスの抜け出しも出来ない様子なので、影響をため込んでいる部分が心配です。