口永良部島のマグマ溜まりと噴火  4月12日 4月13日追記

 本日公表されたGPS変動データーには、先週から引き続く富士山の変化が現れていました。こちらの関連イラストは富士山のマグマ溜まりの活性化のページに追記してありますのでよろしければご覧下さい。今朝5時前に房総半島東側でM3.6震度2で神津島のマグマ溜まりの潰れの地震も起きておりそちらで説明しています。予想した地震でした。
 今回のGPS変動データーには屋久島の変動が表れていました。少し前から変化が始まっている感じです。琉球列島の島々はフィリピン海プレートに押されていますが、太平洋プレートとユーラシアプレートの影響を受けており、動く方向が大きく変動することが特徴です。今回の動きは、ある意味ふらついているこの動きが何かの影響を受けているように見える物でした。
 この場所で動きがあるとすると、近傍の地震と火山の活性化につながると思います。屋久島の周囲には2014年8月に34年ぶりに前兆なく噴火した口永良部島と、噴煙を上げ続けている薩摩硫黄島が存在しています。
 火山にはマグマ溜まりが必ず存在するので、その位置を考える上で群発地震を探して噴火との相関を確認する必要があります。その上で屋久島の動きとの関係を調べる事にしました。

 地震のデーターは2011年以降を調べて群発地震と噴火との相関を確認しました。イラストにデーターを添付しています。
 この噴火には前兆がなかったことにされていますが、群発地震の状況には明瞭な変化が現れており、再現性を持つ物でした。噴火の数ヶ月前から群発地震が起き始め、状況に合わせてGPS変動を伴いながら噴火に至っていました。火口付近に微弱地震の群発をマグマ溜まりの潰れとして引き起こすケースもありました。
 2014年の噴火時には8月3日の噴火よりも半年近く前の3月4月に群発地震が始まっています。その後位置を変えて群発地震が続き8月の噴火に至っています。この時はGPS変動が遅れており、深い位置から起きた変化がGPS変動よりも先に噴火を引き起こした様子です。
 2015年のケースはこれとは異なり、GPS変動と群発地震の発生は同時期でした。群発地震は2014年同様に位置を変えて噴火に至るまで続きました。
 34年ぶりという噴火が火口下部周辺の変化を起こしにくかったのか、先に噴火が起きてからGPS変動が起きるという状況になっています。山が盛り上がる前に噴火が起きてその分あとで萎んだという変化でした。

 火山の特徴が理解出来たところで薩摩硫黄島です。近くにあるので、マグマ溜まりはほぼ共通で、群発地震の位置も多少北にずれる程度だと思います。現状活性化は認められないのですが、今回のGPS変動のリスクの点からは口永良部島と同等に扱っておきます。火山性地震や微動に注意が必要という意味です。
 口永良部島の群発地震は今年の1月に少し活性化しています。桜島の地殻変動によりマグマ溜まりが影響を受けたことを表している物になります。
 その結果として、霧島のように火山性地震が増えてくる可能性があると思われます。噴火に至るとしても小規模だと思いますが、様子を見る必要のあるレベルでしょう。
 この群発地震だけなら分かりやすい状況だったのですが、ここに屋久島の向きが180度も変化するという変動が加わります。この変動はもしかしたら富士山のマグマ溜まりの押している力に影響を受けているかも知れないと思わせる物でした。
 もともと方向の動きが大きいと言うことは、小さな力でも大きく動く要因があるせいではないかと思います。富士山の方向から大隅半島東南沖の群発地震の位置を経てこの琉球列島全体を押せる力が働いていると思います。

 距離があるし今回の富士山は大きな変動ではないので、強い影響が及んでいるとは思いません。それでも屋久島にふらふらされると近傍のマグマ溜まりも影響を受けるでしょう。ここにどの様な影響が及ぶことになるのか、少し心配になったので今回の記事となりました。
 1月から時間もたち、火山の上側に影響が出てくる時期でもあるので口永良部島と薩摩硫黄島に変化が起きる可能性を指摘することにしました。大きな変化にはならないと思いますが、火山活動への変化が生まれてくるかも知れません。
 マグマ溜まりの群発地震のメカニズムを様々に説明してきています。今回は屋久島の動きから口永良部島を解析する必要が生まれたので、ここに一通りを簡単に行った結果を公表しました。

稲生雅之
イオン・アルゲイン
4月12日追記
 薩摩硫黄島については噴火に見落としがあり、2013年6月に小規模の噴火をしていました。
 この時には2013年1月に群発地震があり、2月に少しずれてM5.1の地震が起きています。噴火にはこの延長線上の活動で至った物と考えます。群発地震が起こしたのは地震だけと思い込んでしまい、噴火の確認を忘れました。
 追記で明確にしたいのは、群発地震の位置が口永良部島とほぼ同じで区別が難しいことと、こちらも小規模の噴火に至りやすい状況にある事です。地震活動だけでなく小規模の噴火まで注意が必要な火山でした。

4月13日追記
 今朝の4時頃に屋久島でM4クラスの地震があったのですが、大きさにもかかわらず揺れが計測されておらず、気象庁にも携帯情報にも載らない地震になりました。
 震源から約45kmで口永良部島、65kmで薩摩硫黄島、115kmで諏訪之瀬島です。火山性地震の計測には載っていますのでデーターを紹介したいと思います。
 揺れのスケールは3枚とも同じで、一マス5ミクロンです。諏訪之瀬島の最も揺れている部分で0.15mmの揺れ幅と考えて下さい。今回計測された揺れは低周波地震に見える物で、マグマ溜まりに見られるゆっくりとした振動パターンです。
 科学として書いておく必要のあることがまず1点です。諏訪之瀬島は活動的なので、震源から最も遠いのに大きく揺れています。これは火山が地震波に共振を起こしているのであり、噴火するほど下から突き上げられているので、重力と突き上げの力がそこそこにバランスして他の揺れの影響を大きく受ける様になるのです。共振状況がその火山の上部マグマ溜まりの状況を教えてくれるのです。

 他の例では秋田駒ヶ岳のマグマ溜まりが現在活動的なので、他の地震の影響を強く受けています。桜島の一部も同様です。振動という単純な物理なので当然であり、群発地震だけでなくこういった部分からも活動の状況を知ることが出来るのです。科学者がしっかりとした評価をすれば、この共振波から様々な条件が導き出されてもっと多くのことが分かるはずです。今後の科学の進歩のために書いておきます。 
 M4の揺れが深さ約20kmで起きたのに、地震としての揺れが計測されないのには不思議さを感じますが、もともと地震計の性能がこの種の低周波地震の計測に向いていないのかも知れません。この点もいずれ明確になるでしょう。震度情報他は明日の夜には公表されると思います。
 現状でのこちらの評価ですが、位置的には口永良部島のマグマ溜まりの潰れの影響を強めに受けている地震と思われます。屋久島のGPS変動による揺らぎがもたらした地震に見えていますが、これだけではサインの一つであり明確になりません。この火山と薩摩硫黄島も注意する必要があると思います。地震だけでなく噴火も含めて様子を見る必要があるでしょう。